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画像診断・画像検査について

          
肝臓の画像診断

[1] 画像診断の目的

  • 正常肝⇒慢性肝炎⇒肝硬変と進む肝疾患の進展状態を肝臓の形態から把握すること。
  • 肝内の占拠性病変を見つけ、良性・悪性の診断を行うこと。 (腫瘍の検出と鑑別)(「肝がんについて」[4]肝がんの検査の[画像検査]ご参照)
  • 腹水や脈管拡張の有無を判断すること。

[2] 判定方法

  • 超音波検査が最もスタンダードです。
  • CT、MRIは主に造影剤を用いて行われ、腫瘍の鑑別、経過観察が可能となります。(腫瘍の検出と鑑別)(「肝がんについて」[4]肝がんの検査の[画像検査]ご参照)
  • 診断医、超音波検査士は、下記(図1)に示すポイントにて判定します。5つのポイントがあり、大きさの変化、肝辺縁の鈍化、肝表面の凹凸、内部の粗雑具合、脾臓の大きさ (門脈圧亢進) 、です。
  • 肝硬変に近づくにしたがって、下記の変化を示します。
     @右葉が小さく萎縮し、左葉が腫大する。次に両葉が萎縮する。
     A肝臓の辺縁が丸くなる。
     B肝臓の表面が凹凸不整になる。
     C肝臓内部は不整、ざらざらになる。
     D脾臓が腫れ、肝臓につながる血管が太く蛇行する。
  • 肝臓を観察すると同時に、胆嚢・すい臓・脾臓・腎臓の観察も行われます。

診断に用いる画像の一例

(図1)診断に用いる画像の一例

[3] 超音波検査

  • 医師、超音波検査士によって行われます。
  • 非侵襲的検査であるため、第一選択の画像検査です。
  • 簡便ですが、弱点があります。空気 (肺、消化管) 、骨、脂肪により超音波の伝播が阻害されるため、見えない部位が存在することです。
  • (表1)に示すようなスコアリングシステムを用いることが多くあります。

(表1)スコアリングシステム

スコア表

0〜3点 minor change 軽度な変化のみ
3〜5点 chronic liver disorder 慢性肝炎パターン
5点以上 liver cirrhosis 肝硬変パターン

[4] 最新の画像検査 エラストグラフィ

  • エラストグラフィ(elastography、硬度測定)は触診にて診断していた病変に関連する硬さの情報を、超音波やMRI等を駆使して測定する新たな画像診断法です。肝臓において、肝硬変の名前が示すとおり、肝疾患進行にて肝線維化が進み、肝臓は硬く変化するため、肝線維化診断に役立ちます。
  • 肝生検が肝線維化診断のゴールドスタンダードですが、入院を要する、出血や疼痛のリスク(侵襲的な検査)、サンプリングエラー、診断医による診断結果のばらつき等の欠点があります。
  • 2000年前半にフランスのエコセンス社がFibroScan(フィブロスキャン)を開発し、肝臓へのエラストグラフィの応用について注目されるようになりました。 (図2)
  • 近年普及が進んでいるShearWave Elastography(シアウェーブ エラストグラフィ)は、肝硬度をカラーマッピング表示できるよう開発され、通常の超音波画像を見ながら任意の部位の肝硬度測定が可能となり、フィブロスキャンでは測定できない腹水貯留例でも測定が可能です。各超音波機器メーカーのハイエンドモデルに搭載されています。
  • エラストグラフィの原理
    エラストグラフィはその測定基本原理の違いから下記の2つに大別されます。
@弾性波の速度から弾性率を測定する動的エラストグラフィ
モノに伝わる波の速さを測る方法(例:水たまりの波の伝わり方や豆腐を揺らした時の揺れを想像してください)
A組織の歪みを測定して硬さの代用とする静的エラストグラフィ
力を加えた時のひずみ具合を測る方法(例:硬いボールと柔らかいボールを押した時を想像してください)
 実際には、モノに力を加えた時(加振)のその反応を測定しています。加振の方法としては、体内の心拍などの生理的振動を利用する方法、体外からバイブレータなどの加振装置で振動波を与える方法、超音波を焦点に集束させ体内で波を発生させる方法などがあります。また、その反応の観測方法として超音波とMRIの2種類が用いられています。
  • フィブロスキャンの正式名称は、Vibration-Controlled Transient Elastography(バイブレーション-コントロールド トランシャント エラストグラフィ)です。登録商標のフィブロスキャンで保険承認されています。
  • 専用プローブによって発生させた単回の波が肝臓を伝わる速度を計測することによって、肝臓の硬さを測定します。(体表から肝臓に向けてプローブ先端の振動により発生した低周波の波を送ると、その振動は皮膚を通じて脂肪組織に入り肝臓に伝わります。この波の進行を超音波で追跡し、その速度を計算します。) 硬くなるほど速度は速まります。
  • 測定結果はkPa(キロパスカル)で表示されます。
  • 大阪市大のデータでは、C型肝炎患者において5 kPa以下が正常肝、17 kPa以上が肝硬変の診断となります。
  • B型肝炎、アルコール性肝炎、非アルコール性脂肪肝炎や原発性胆汁性肝硬変などにおいても、基準になる値が若干の違いがあるものの有用であることが報告されています。
  • フィブロスキャンは食事の影響を受けるため、原則として絶食にて施行します。妊婦とペースメーカー装着者は安全性のため施行できません。
  • 10回の有効な測定を行い、中央値と四分位範囲が画面表示されます。四分位範囲/測定中央値が0.3を越える場合は、測定値の信頼性が乏しくなり、検査不成功となります。
  • 最近、超音波の減衰を利用したControlled attenuation parameter(CAP)と呼ばれる新しい技術が付加されました。肝臓内の脂肪蓄積度を反映するとされており、脂肪肝の診断、診療に役立つことが期待されています。

FibroScanについて

(図2)フィブロスキャンについて(出典 インターメディカル社より)

[5] 特殊な画像検査

  • シンチグラフィ(放射線同位体を用いた検査)
    アシアロシンチグラフィ(肝受容体シンチグラフィ)とは、アシアロ糖タンパクが肝細胞膜表面に存在する受容体と特異的に結合し、受容体を介して肝細胞内に取り込まれることを利用したシンチグラムです。アシアロ糖タンパク受容体量は機能している肝細胞数に比例するとされており、重症肝不全時等の肝予備能の評価に用いられます。
  • MRCP(magnetic resonance cholangiopancreatography)はMRIを用いて胆嚢や胆管、膵管を同時に描出する検査で、主に、すい臓疾患でよく用いられます。肝臓では、胆管に関する疾患に対して、拡張の有無や狭窄・閉塞部位の確認に用いられます。